マルク・シャガール展④
~愛のリトグラフを集めて~
「マルク・シャガール展」
好評開催中~27日(日)まで
〈エルサレムウィンドウ〉
マルク・シャガールの重要な業績のひとつにステンドグラスの制作があります。敬虔なユダヤ教徒であったシャガールは聖書の教えを大切にしており、自身の作品にも大きな影響を受けています。そんな中、彼が教会のステンドグラスに関心を持ったのは自然のことだったのかもしれません。1956年にランスにあるガラス工房で職人たちと共同制作したのをはじめとして、晩年までステンドグラスの制作(デザイン)を続けました。有名なところではエルサレムのシナゴーグ、ニューヨークの国連本部、サルブール礼拝堂(フランス)、チューリヒのフラウミュンスター、イギリスのチチェスター大聖堂、ドイツのザント・シュテファン聖堂などがあります。特にサルブール礼拝堂のステンドグラス(1976~78)は高さ12mにも及ぶ巨大なもので、「平和」というタイトルがつけられているそうです。
その中でも特に有名なものが1960年にエルサレムにあるヘブライ大学医療センターのシナゴーグ(ユダヤ教の教会)に飾るために依頼された「エルサレムウィンドウ」です。これは「創世記」に記されたイスラエルの12の部族をモチーフにシャガールによって原画が描かれたもので、それぞれの部族の名前を冠した12点(高さ338×幅251cm)がランスのガラス工房で制作されました。
当時のフランス文化大臣アンドレ・マルローはこのステンドグラスにいたく感動し、1961年にルーヴル宮殿の敷地内に特設パビリオンを設置して一般市民にも公開。その後ニューヨーク近代美術館に巡回し、1962年シャガール立ち会いのもとエルサレムのシナゴーグに設置されたのです。
当時の新聞でも「戦後、主要な画家たちによってなされたもののうちで最大の偉業である」との賞賛の言葉を並べています。ロシアの田舎町に生まれたユダヤ教徒のシャガールにとって、どれだけ名誉なことであったか、想像に難くありません。その「エルサレムウィンドウ」の原画となった作品は、1962年にパリの工房でリトグラフとして制作され、その制作過程や下絵なども収録し、また新たにオリジナルリトグラフ2点を加え、合計14点セットのリトグラフ集(限定5,000部)として販売されました。この版画集「エルサレムウィンドウ」は世界中で人気を博し、日本でもコレクターの蒐集アイテムとして広く愛されています。今回のギャラリーかわなかでの展示ではこの14点のうち8点を展示販売しております。美しい色彩とシャガールらしい幻想的なモチーフはコレクションとしてもお部屋のインテリアとしてもぴったりです。是非この機会にシャガールの色彩あふれる世界に触れてみください。
〈掲載画像〉「エルサレムウィンドウ」より「ダン族」リトグラフ